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認知症

認知症とは

これまで正常に働いていた脳の機能が、脳の神経細胞の変性が原因の障害(アルツハイマー型認知症、レピー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの神経変性疾患)、脳血管障害(脳卒中)、頭部外傷、感染症などをきっかけにして、認知機能が低下していき、次第に記憶や思考面にも影響が起きている状態を認知症と言います。
認知症になると、物事を記憶する、判断する能力、時間や場所・人などを認識する能力などが低下していくので、それによって日常生活に影響を及ぼすようになります。

物忘れとの違い

なお認知症とよく似た症状に加齢による健忘症(物忘れ)があります。ただこれもしっかり観察していくとその違いというのはある程度わかります。

例えば健忘症による物忘れでは、体験したことの一部を忘れている、もしくは本人が物忘れをしたという自覚があります。そして何より日常生活に支障をきたしていない点も挙げられます。一方の認知症患者様の物忘れの場合は、体験したこと全てを忘れているほか、物忘れをしているという自覚がありません。また、先にも触れましたが、日常生活に支障をきたしているということもあります。このように違いはいくつかありますが、一般に判断するのは至難の業です。そのため認知症が疑われる方については、一度検査を受けられることをお勧めします。

このような症状はご相談ください(例)

  • 物の名前が思い出せなくなった
  • しまい忘れや置き忘れが多くなった
  • 何をする意欲も無くなってきた
  • 物事を判断したり理解したりする力が衰えてきた
  • 財布やクレジットカードなど、大切な物をよく失くすようになった
  • 時間や場所の感覚が不確かになってきた
  • 何度も同じことを言ったり、聞いたりする
  • 慣れている場所なのに、道に迷った
  • 薬の管理ができなくなった
  • 以前好きだったことや、趣味に対する興味が薄れた
  • 鍋を焦がしたり、水道を閉め忘れたりが目立つようになった
  • 料理のレパートリーが極端に減り、同じ料理ばかり作るようになった
  • 人柄が変わったように感じられる
  • 財布を盗まれたと言って騒ぐことがある
  • 映画やドラマの内容を理解できなくなった など

検査に関して

認知症発症の有無を調べる検査の内容ですが、まず問診として、記憶障害、認知機能障害、日常生活の支障や困難さなどの状態を確認します。続いて神経心理学検査(知能、記憶検査 等)を行います。さらに詳細な検査が必要と判断すれば、CTやMRIなどの画像検査等が実施できる医療機関をご紹介し、総合的に判断、診断します。

認知症のタイプ

現在の医療では、認知症を完治させるというのは困難です。しかし軽い症状のうちに発症を確認(早期発見)し、その時点で適切な治療を行えれば、認知症の進行を可能な限り遅らせる、もしくは症状をある程度改善させることが期待できます。主な治療法としては、薬物療法と非薬物療法があります。

アルツハイマー型認知症

脳に特殊なたんぱく質(アミロイドβ(ベータ)他)が蓄積するようになると神経細胞は破壊され、やがて減少していきます。これによって脳の神経は情報を伝達できなくなってしまい、やがて機能異常を起こすようになります。これがアルツハイマー型認知症です。発症によって現れる症状は、記憶障害、見当識障害、思考障害(物盗られ妄想)などです。

脳もいわゆる臓器のひとつですが、神経細胞が消失してしまうと脳そのもの(海馬)が萎縮し、頭頂葉や側頭葉が障害を受けます。そして脳からの指令を受けている身体機能も徐々に低下していきます。

レビー小体型認知症

レビー小体とは特殊なたんぱく質の塊を言い、これは脳の大脳皮質や脳幹に多く発生するとされ、海馬や後頭葉が障害を受けやすいと言われています。この認知症を発症すると、認知機能障害、幻視、パーキソニズム、レム睡眠行動障害(睡眠中に大きな声を上げる、怖がる、暴れる等)などの症状が特徴的に現れます。

前頭側頭型認知症

比較的若いとされる40~60歳代に発症するとされるタイプの認知症です。多くは70歳頃までに発病すると言われています。これは前頭葉と側頭葉が萎縮することによって起きるとされ、これらが萎縮することで、脱抑制、人格変化、帯同行動などの症状が現れるようになります。現時点では、発症の原因は不特定とされていますが、脳の神経細胞の中にあるたんぱく質が関係しているのではないかと考えられていますが、まだ解明までには至っていません。

脳血管型認知症

脳血管障害(脳梗塞、脳内出血 など)が引き金となって発症する認知症です。脳の血管が何らかの原因で詰まったり、破れて出血などすると、脳細胞に酸素を十分供給できなっていきます。その結果脳の神経細胞は徐々に破壊され、やがて認知症を発症するようになります。なおこの場合は、障害部位にのみ機能低下が現れることから、まだら認知症、運動・感覚障害、情動失禁などの症状がみられます。

治療について

薬物療法

薬物療法につきましては、認知症のタイプによって使用する薬物が違います。いずれにしても早い時期から投与を開始すれば、改善効果はより認められると考えられています。
アルツハイマー型認知症の患者様の薬物療法は、脳の神経細胞が破壊されたことで起きる症状(中核症状)を改善させることが目的となりますので、病気の進行を遅らせる治療薬と対症療法として周辺症状(不安、焦り、怒り、興奮、妄想など)を抑える治療薬も使用する場合があります。
脳血管型認知症の患者様の薬物療法は、病気を再発させることがさらに悪化の要因となるため、その予防に努めるようにします。具体的には、脳血管障害の要因となる、高血圧、糖尿病、心疾患などをしっかりコントロールし、脳梗塞の再発を予防する薬を使用していくなどです。
なお認知症のタイプに関わらず、意欲・自発性の低下、興奮などの症状がみられるのであれば、脳循環・代謝改善薬を、また抑うつ症状には、抗うつ薬を使用することもあります。また前頭側頭型認知症タイプの方、レビー小体型認知症タイプの方につきましては、対症療法として用いられます。

非薬物療法

薬物に頼らずに脳を活性化していこうというのが非薬物療法で、これはまだ残っているとされる認知機能や生活能力を高めていくために行われます。
例えば、認知症と診断されたからといって、その時点で全てにおいて人の手を頼らなければならないという方は非常に少なく、患者様本人ができることはまだまだいろいろあります。そのためご家族の方は、家庭内で患者様本人の役割や出番(洗濯物を畳む、食器を片づけるなど)をつくるようにしてください。まずは日常生活を前向きに送っていける環境づくりが大切です。
また、昔の出来事を思い出す(回想法)、無理のかからない範囲で書き物の音読や書き取り・計算ドリルをする(認知リハビリテーション)、音楽鑑賞、楽器の演奏(音楽療法)、花や野菜を育てる(園芸療法)、自分は誰で、ここはどこかなど、自分と自分のいる環境を正しく理解する練習を重ねる(リアリティ・オリエンテーション)などの方法も効果的と言われています。
このほか、ウォーキングなどの有酸素運動を行う運動療法、動物と触れ合う(ペット療法)などの治療も有効とされています。